Primal Scream(プライマル・スクリーム)

イギリス・スコットランド出身のロックバンド Primal Scream(プライマル・スクリーム)。

「ロック(=ロックンロール)ミュージック」はアメリカ黒人のブルースとR&Bを主原料とし、白人が西洋由来のカントリーなどとブレンドして大衆向け音楽商品として完成させた。

ロックに限らずポピュラー音楽の土台を作り上げてしまった The Beatles(ビートルズ)の異常さについては言うまでもないが、ロックだけに限るのであれば The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ、略称はストーンズ)の存在は大きい。ストーンズが50年間鳴らし続けてきた「ロックのスタイル」は我々の耳と脳に刷り込まれてしまっているのだ。イギリス国家を挙げてのブランディング(世界支配)が成功したとも言える。とはいえストーンズの、特に1970年代の作品群はどれも不朽の名作・名盤揃いであったことは間違いない。

そんなストーンズに真正面から挑んだような、プライマル・スクリームのアルバム『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ(1994年)』。
早速アルバムのオープニングを飾る2曲、ストレートなロック・ナンバーを視聴してみよう。

Primal Scream – Jailbird

Primal Scream – Rocks

(良いよねー! 髪型も何もかも!)

前作『スクリーマデリカ(1991年)』はロックとダンス(アシッド・ハウス/クラブミュージック)の融合が成功し大ヒット。まさしく「時代のバンド」であったプライマル・スクリーム。
続く本作『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』では突如ロックンロールの原点(ルーツ)に回帰した。この方向転換は世間から「’70年代ストーンズの真似」「失敗作」などと散々だったようだ。しかし私は「ストーンズを超えたロックンロール・アルバムの1枚」だと思っている。

ロックンロールの聖地、USAテネシー州メンフィスでレコーディング。アルバム全編を通してアメリカ南部の霊的黒人オーラを感じられる、ファンキーでソウルフルな傑作に仕上がっていて、かつこのバンドにしかできない、ジャンルを超えた引き出しの多さも十分生かされている。何より、アルバムを通して聴いて楽しい、何度聴いても飽きない。金儲け目的のインチキロック商品ではない、私たちの心に響く本物のロックンロール・バイブルだ。

ロックは支配者や権力者のものではない、弱者の魂を救済するためのもの。

ロックは単なる娯楽音楽ではないのだ。プライマル・スクリームはビッグになってからもこちら側に寄り添い続けているロックバンドなのだと思えた(世界的スターやセレブリティの多くはあちら側だ)。

『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』からもう1曲、コテコテのバラードです。

Primal Scream – (I’m Gonna) Cry Myself Blind

(ギターのフレーズもロータリーオルガンの音色も最高! 超好み!)

世間的に「失敗作」との評価だったのは、その時代とのギャップやタイミングの問題、評論家の過剰な期待のせいだろう。

バンドの使命は一旦放棄してただ好きなことをやった、趣味全開のアルバムだったのかもしれない。

このリセットが効いたのか、バンドは再び新たな方向へと進む。
当時流行った「ダブ」と呼ばれる音楽テイストをガッツリ盛り込んだアルバム『バニシング・ポイント(1997年)』を発表。

ちょうどその頃解散した伝説のバンド(キング・モンキーことイアン・ブラウンがヴォーカルの)The Stone Roses からベーシストのマニが加入したこともあり、バンドは再び勢いを取り戻した。マニがこのアルバムでベースを弾いたのは2曲だけだったらしいが、MVにも出演してしっかり存在感をアピールしてる。

Primal Scream – Burning Wheel

(本当にクールでかっこ良かった。バンドとして最高のゾーンに入っていると感じた。)

真のロック精神=反骨精神のさらなる加速!

以降もアルバム毎に大きく音楽性を変えていったプライマル・スクリーム。そのどれもが時代の先端を鋭く切り取っており、反体制的な歌詞も含めてリアルタイムではいつも最高に尖っててカッコ良かった。反戦・反米の姿勢も強く「ボム・ザ・ペンタゴン」というタイトルの(Rage against the machine に匹敵するような)曲を発表するほどの攻めようだった(アメリカ同時多発テロにより現実のものとなったため、歌詞は変更されたそうだ)。

ロックの本質である〈反骨精神〉を磨き上げていく姿は本当に素晴らしかった。ただ少し残念なのは、デジタル・ロック全盛期のサウンドは耳への攻撃力が強過ぎて、今となっては繰り返し聴けなくなってしまったところ。

そんな中、この『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』は何度聴いても飽きない、繰り返し聴きたい、時代を超えた不朽の名作として輝きを放っている。

まだまだ現役のプライマル・スクリーム。これからもロックな活躍を楽しみにしていますね。

■ 所有CD
1. Primal Scream『Sonic Flower Groove』
2. Primal Scream『Primal Scream』
3. Primal Scream『Come Together EP』
4. Primal Scream『Screamadelica』★★★★
5. Primal Scream『Give Out But Don’t Give Up』 ★★★★★
6. Primal Scream『Vanishing Point』★★★
7. Primal Scream『Xtrmntr』
8. Primal Scream『Kill All Hippies EP』
9. Primal Scream『Evil Heat』
10. Primal Scream『Dirty Hits』
11. Primal Scream『PRML SCRM Live In Japan』
12. Primal Scream『Shoot Speed (More Dirty Hits)』
13. Primal Scream『Riot City Blues』

■ リンク
プライマル・スクリーム (wikipedia)
公式サイト

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