Nine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)

活動休止していた Nine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ、略称:NIN、メンバーはトレント・レズナーさん1人のみ)が帰ってきた。
復帰早々、Fuji Rock Festival ヘッドライナー(初日大トリ)として来日。何と YouTube 公式でライブ中継を生配信するとのことで、自宅にいながらリアルタイムで観ることができました。良い時代!

Nine Inch Nails – Live at Fuji Rock Fest 2013.7.26

(長年のライブメンバーで正式メンバーと言ってもいいギタリスト、ロビン・フィンクさんの髪型にいつも目が釘付けになる)

曲に合わせて映像だけでなくスクリーンを含めた舞台装置そのものが次々と変化していく豪華なステージセットに驚く。音と映像が融合したハイテク・ロック・エンターテインメントだ。映像は事前に作られたものをただ映し出すのではなく、メンバーの動きなどに合わせリアルタイムで変化する点は最先端だと感じた。
何より、このバンドの音やコンセプト、世界観のイメージとも見事にマッチしている。

NIN 不在の数年の間に後継を狙ったバンドも多々あれど、やはり本家・ホンモノ・オリジナルは圧倒的。一夜にしてロック最前線へとカムバックしたのでした。

Nine Inch Nails – Came Back Haunted

もうすぐ発売されるニューアルバム『Hesitation Marks』からの先行シングル『Came Back Haunted(霊に取り憑かれて帰ってきた!?)』。エレクトロ方向の新たな音。打ち込みによる淡々としたドラム・ループから冷たい攻撃性のようなものが伝わって来る。
MV(ミュージック・ビデオ)もテープレコーダー1つだけでこれほどクールに魅せるアイデアが上手い。
■ 更新:デヴィッド・リンチ監督による新MV公開にともない初期MVは削除されたようです。

ここからは、2009年に活動休止する直前頃のMVを鑑賞したいと思います。

Nine Inch Nails – Echoplex live at rehearsals, July 2008

(リハーサル。洗練された引き算のアレンジが光る。あとプロに対して失礼ですが、演奏レベルが高すぎる! そして命懸けの作戦を実行する特殊部隊のようなこの空気感…)

NIN(=トレント・レズナーさん)は「インダストリアル・ロック」のスタイルやサウンドにおいて常に革新的であり、時代を切り開いてきた開拓者。ミュージシャンの中のミュージシャン、音作り職人、クリエイターとしての頂点を極めた1人だ。

しかし、どこか悩ましい。

NIN が〈何か〉と闘っている姿を見ていつも思う。「怒り・攻撃・破壊」と「内省」との往復は、病んだアメリカの姿と重なり、「戦争」という言葉が常に浮かんでくる。
例えば NIN はアメリカの最新鋭戦闘機のようなバンド、なのかもしれない。「カッコイイ乗り物」と感じるのか「恐ろしい殺人兵器」と感じるのか…。受け手の置かれている状況によって真逆のものとなり得るような、そんなところが悩ましい。

Nine Inch Nails – Survivalism

(監視社会。今はより進んだデジタル情報監視が行われているのだろう。もう逃げられない。そして歌詞に並ぶ言葉たちから、ディストピア小説の金字塔、ジョージ・オーウェルの『1984年』を思い出した。人間にとってあれほど恐ろしい世界はないが…すぐ目前に迫っている。)

戦争。

建国以来、絶え間なく戦争を続ける国アメリカ。何故アメリカは戦争をするのか?
第二次大戦後、世界の覇権国となってからは「正義のため」「民主主義のため」といったスローガンのもと他国への軍事介入を繰り返し、何百万人もの人々を殺してきた「世界の警察」アメリカ。「テロとの戦い」と言えばどんな戦争犯罪でも非難されることはない(誤った情報から始めたイラク戦争だけでも100万人以上のイラク人が犠牲になったと言われる)。

ジャーナリズムはもうダメかもしれない。ならば、かつてのジョン・レノンさんやボブ・ディランさんのように〈ストレートな反戦のメッセージ〉を発するアーティストはいないのだろうか?(ブッシュ大統領を非難するセレブリティは多かったが、本当の敵を隠すためのミスリーディングのニオイを感じた)

今こそ、真のロック精神を持つアーティストやミュージシャンが必要だ。

暴力による一極支配(=グローバリズム)の世界ではなく、異なる文化や価値観を尊重する平和な世界を目指そう。いつの時代も支配者が最も恐れるものは、一般大衆の心が一致団結すること(だから人々の分断を煽り、心を壊そうとする)。弱い我々にその力をくれる者を「本物のロック・アーティスト」と呼び讃えたいと思う。

…だいぶ脱線しましたが、今回は〈戦争〉についてのメッセージを強く感じたため思ったままを綴ってみました。
アメリカが関わった正義とは到底思えない戦争・紛争を見てきたことで、若い頃あこがれたアメリカに失望し、とりわけハリウッド的エンターテインメントの多くが〈プロパガンダ〉であったのだと気付かされたのです。9.11 をきっかけに、まるで映画『マトリックス(1作目だけは大傑作でした)』の如く、世界の見え方が激変してしまったのはきっと私だけではないはず。

きびしい現実をひと時忘れされてくれるエンターテインメントは人間に必要なもの。だが「正義のための戦争」などというものだけは絶対にあってはならない。

■ 所有CD
『Broken』(1992)
『The Downward Spiral』(1994)
『Further Down The Spiral』(1995)
『The Fragile (Left),』『The Fragile (Right)』(1999)
『And All That Could Have Been』(2002)
『With Teeth』(2005)
『Year Zero』(2007)
『The Slip』(2008)
『Pretty Hate Machine: 2010 Remaster』(2010)
『Hesitation Marks』(2013)

■ リンク
アメリカ合衆国が関与した戦争一覧
軍産複合体
新保守主義 (ネオコン)
1984年 (小説)

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